『ハトを知らない人々』

ハトを知らない人々と、ハトのちびと、旅人との出会いと旅立ちの物語です。

『ハトを知らない人々』( ごあいさつ )

f:id:mikor300koeru:20140505072525j:plain

はじめまして。ブログに足を運んでくださった皆様に心から感謝いたします。

物語を構想し、製本し、ブログまで立ち上げたのは今回が初めてです。製本して誰かに見せたことも実は初めてでしたが、ようやくひとつ夢を叶えることができました。(※製本といっても立派なものではなく、紙を折りたたんで綴じるようなものですが(^^;))

いつも自分に自信がなくて、一番好きでやりたいことにも挑戦できない毎日でしたが、ここに出てくる「旅人」のような方と出会って、私の人生はぐるっと半回転しました笑  感謝の思いも込めて、まごころで作りましたので、皆さまにも楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

読んでいただいた皆様…

もっと深く読んでいただきたいという思いもあって、『ハトを知らない人々』の解説ページも進行してつくっております。「LINK」より飛べる仕組みになっています。(下記リンクからも飛べます)毎週更新していこうと思いますので、是非お立ち寄りください^ ^

(解説ページ:

http://tabibitototomoni.hateblo.jp

 

 

物語を通して、皆さん各自に新しい発展がありますようにお祈りしています。

読んでくださった方々、心から感謝いたします。

(これから読んでくださる方、通読時間は電車の中で読むと3駅分くらいです。焦らずじっくりと読んでください。また、率直な感想が聞けたら嬉しいです)

 

 ありがとうございました^ ^

 

 

 

「ちび」

町に一羽の小さなハトが住んでいました。ハトは人間たちが好きでしたし人間たちもハトが大好きでした。けれども人間たちはハトが「鳥」だと知りませんでしたし、「ハト」という名前も知りませんでした。だから人間たちは、ハトをただ見た目が小さいから「ちび」と呼んでいました。

 

f:id:mikor300koeru:20140505074844j:plain

 

 

「食堂の仲間たち」

f:id:mikor300koeru:20140505083231j:plain

 ハトは毎日仲間たちがいる食堂に行っては、日が暮れるまで一緒に過ごしていました。食堂の仲間の中には、町いちばんの美人さんもいましたし、町いちばんの勉強家もいました。食堂のおばさんはいつもおいしい料理をつくってくれたし、その息子はギターを弾きながら上手に歌を歌いました。また、となりに住んでいる子供たちも遊びに来ました。ハトは食堂の仲間たちと毎日歌ったり踊ったりして楽しみました。けれどもハトは心の奥でこう思っていました。

「どうしてこの人たちと私は姿かたちが違うのだろう。」

「私は上手く生まれなくてこんな姿をしているのだろうか。」

 人々に聞いても答えてくれませんでした。

 

誰に聞いてみてもみんな、

「別に俺たちはきにしちゃいないさ。ちびはちびじゃないか。一緒に楽しんで暮らそう」と言いました。ハトは瞬間なぐさめられましたが、どこかもやもやとした気持ちが離れませんでした。

f:id:mikor300koeru:20140505075108j:plain

             

 

「大会議」

f:id:mikor300koeru:20140505075551j:plain

ある日ひとりの旅人が町を訪れました。それで町中大騒ぎになりました。外部から人がやってくることなんて、千年に一度あるかないかの出来事だったからです。

 食堂の仲間たちも、テーブルを囲んでああだこうだと旅人について論じ合っていました。ハトはテーブルの上で様子をうかがっていました。それで尋ねました。

「外から人間が来ることがそんなに珍しいことですか?」

 食堂の息子が大きくうなずいて答えました。

「俺も生まれてはじめての出来事だ。母ちゃんだってはじめてだよな」

 

 食堂のおばさんもおおきくうなずきました。

「私もはじめてさ」

「もしかしたらトカイの人間かもしれない。ぼくは本の中でしか見たことないけど、いつも機関銃を持ち歩いてるって話を聞いたよ」

「それはおっかない。だが町いちばんの勉強家が言うならそうなんだろう」

 勉強家は眼鏡を少し持ち上げて恥ずかしそうに目をそらしました。すると今度はとなりの子供たちが答えました。

「ぼくたち見たよ!旅人の足がすうっと透けてるの!」

「おばけだったんだよ!」

 大人たちは大笑いました。

「おばけがこんな昼間っから現れるか」

「なんだかぶっそうな話ばっかりね」と町いちばんの美人がほほえみました。

「やっぱりトカイの人っていう話が一番有力なのかしら」

「トカイって何ですか?」ハトは思わず尋ねました。勉強家は得意そうに答えました。

「この町の何千倍も広くて大きな土地があって、縦にながーい建物がたくさんあるんだ」

「あと心が冷たいから肌も冷たいって話を聞いたぞ」

「そういう説もあります」

「じゃあやっぱりおばけじゃないか!」

子供たちがそう叫ぶと、大人たちはまた大笑いしました。「たしかにおばけみたいだ」

「いずれにしても恐ろしい人間が多いみたいだから、俺たちも気を付けたほうがいいかもしれない」

 

 その後も旅人の噂はあとが絶えませんでした。みんな好き勝手に話を膨らませて面白がっていましたが、話を聞いているとハトは目が回りそうになりました。そして、ハトはどの言葉を信じていいのかだんだん分からなくなりました。

「旅人との出会い」

f:id:mikor300koeru:20140505075836j:plain

 

 ハトが町を歩いていると、ひとりの人間に声をかけられました。

「ねえ君、この辺においしい

 料理屋はないかい?」

「はい、ありますよ。」とハトが見上げて答える

 と、頭に帽子をかぶった見たことのない男でした。

「わあ、やっぱり君、

 私の言葉が分かるんだね。」

 ハトは目をぱちくりさせながら首をかしげました。

「わたし、いろんな国へ出かけているんだけれどしゃべるハトは初めて見たよ

 ハトは自分のことを「ハト」と呼ぶので、

 また首をかしげてしまいました。

 「君、ずっとここに暮らしているのかい?」

 ハトは短く首を動かしました。

 ハトの頭の中には「ハト」という言葉でいっぱいでした。

「こんな小さな町にずっと住んでいるんだね。外は本当に広くて大きいんだよ。私の足だと隣の町まで十日かかってしまうけれども、君の翼なら三日で行けるだろうね」

 ハトは自分のことを指した言葉をうまく理解することができませんでした。けれどもハトは男の言葉をもっと聞いていたいなと思いました。長く悩んでいた答えがあるような気がしたからです。

「ねえ君、飛んでってしまったらどう?」

 ハトはもう耐えかねて「トンデッテとは何ですか」と尋ねました。すると旅人は不思議そうにハトを眺めました。「君には素敵な翼があるじゃないか」

「ツバサとは何ですか?」

 男は驚きを隠せない表情でハトを見ました。

「君はハトなんだ。だからあの大きな空を自由に飛び回ることができるんだよ」 

 その言葉を聞いてハトはびっくりして後ろにどしんとしりもちをつきました その時、遠くから食堂の子供たちが大きな声で叫んでいました。

f:id:mikor300koeru:20140505075921j:plain

「ちびー!ちびーー!そいつだよ!そいつが例のおばけだよ!はやく逃げてー!」

 ハトは混乱する頭でなんとかしようと手をジタバタさせて旅人から離れようとしました。けれども足で走っても旅人の一足にはかないませんでした。

「ねえ君、飛ぶことを知らないんだね。わたしが教えてあげるから、わたしの話を聞いてくれないか?」

 ハトは走るのを止めて、じっと旅人の目だけを見ました。もうハトは何を信じていいのか分かりませんでした。けれども旅人の言葉を信じてみたい気がしました。旅人は真剣にハトを見つめ返したと思ったら、目じりにしわをよせて豪快ににこりと笑いました。

ハトは旅人の豪快な笑みに、思わず顔がゆるんでしまいました。

「ちびー!そいつはトカイから来た化け物だし、機関銃を持っているんだ!それに俺のおやじがトカイの人間は嘘つき者が多いって言ってたぞ!ちび、はやくこっちにおいでー!」

 

 声は町いっぱいに響き渡りましたが、ハトと旅人には聞こえていないようでした。

「ハトを救おう!」

 食堂の仲間たちは子供たちの知らせを聞いてまたも旅人のことで論じ合っていました。

「旅人はどんなやつだった?」

「うーんと、ふつうの人だったよ!」

「おばけじゃなくって?」

「おばけだと思う!でもふつうだったよ!」

 おばさんの息子は子供たちにしつこく問いただしていました。ハトのことがとても心配だったからです。

「それであの男、ちびに『君はハトだから、あの大空を飛ぶことができる』って言ってたよ」子供の言葉に思わず息子は声を荒げました。

 

「ペテン師だ!大空を飛べるわけがないじゃないか!俺たちだって飛べんのに」

「ちびはあいつのもとにいるのか?」

 勉強家も気になって尋ねました。

「うん。ちび旅人についていったよ」

「ちびがかわいそうだ。飛べるはずもないのに・・・。騙されているんだね。なんとか救い出す方法はないのだろうか・・・」

 おばあさんがため息をつくと、仲間たちもハトのことが気の毒に思ってため息をつきました。けれども大切な友人をあきらめるわけにもいきませんでした。

 

「よし、俺たちでちびを救いにいこう!あいつが嘘つきだということを暴いてやろう!」

 その一言に皆も賛同しました。

「そうね。ちびのためにも、私たちがやらなくちゃ」

 そう言ってから、食堂の仲間たちはそれぞれの手のひらを中心に集め、掛け声で気合をいれました。彼らは鋼鉄の岩のように、固く契りを交わしました。

f:id:mikor300koeru:20140505080055j:plain

「必ず飛べる!」

ハトは旅人の肩に乗って、飛ぶ練習をしていました。

「さあ。ここから飛んでみよう。大丈夫、自分を信じて手を広げてみて。翼があるから君は必ず飛べる。やってみよう」

「こ、こわい。高いです」

「だんだんと慣れてくるから、少しずつやってみよう。勇気を出して!」

 意を決してハトがジャンプしたけれども、手があちらこちらにゆれて地面に落ちてしまいました。

「やっぱり無理なんです・・・・」

 

 

f:id:mikor300koeru:20140505080230j:plain

 

    

「手の動かし方に問題があるから、上下に翼を動かす練習をしてみよう」

「できますか・・」

「必ずできる!できるまでやろう!」

 ハトは旅人の迫力に圧倒され、不安になりながらも言われた通りに手を上下に動かしてみました。

「そうそう。慣れてきたね。そしたらもう一度肩にのってみよう」

「またのるんですか・・」

「今の要領で手を動かしてみて。きっとうまくいく」

 ハトはもう一度意を決して肩から飛び降りましたが、怖くて手が固まってまた地面にすてんと落ちました。

「手が動いてなかった。さっきやってみたように、落ち着いて」

 すると奥から声がしました。食堂の仲間たちでした。

「ちびーー!もういい加減にやめて戻ってこい!俺たちとダンスでもしよう!ちびに飛べるわけないじゃないか!」

 子供たちも「そうだそうだ」と賛同して騒ぎました。おばあさんも涙をこらえながら叫びました。

「ちび、そいつに騙されているんだよ!わたしのおいしい料理を食べに来ておくれ!」

 ハトはだんだんと自信をなくしはじめました。もしかしたら男に騙されているのかもしれないと思い始めました。しかし旅人は彼らの前に堂々と立って話し始めました。

「この子のお友達ですか?私は世界中を旅に出ていますが、ここは本当に素敵な町ですね。みなさんとても仲がいい!この子も皆さんが愛しているから、おしゃべりしたくなったのでしょう!」

 食堂の人たちは静かになりました。

「しかし皆さん。私は世界を回る中で、この子をたくさん見てきました。ここからずっと東に向かうと、小さな島があります。そこにはこの子、『ハト』という鳥がたくさん住んでいました。私は実際に見てきたから分かります。ハトはみんな自由に空を飛んでいたのです!」

 

f:id:mikor300koeru:20140505080503j:plain

町の人々は信じられないというように声を漏らしました。

「嘘つき野郎!ハトなんて聞いたことがないぞ!俺たちゃトリなんて見たことも聞いたこともない!」

 すると町中火山が噴火したように旅人を責め始めました。また、ハトを思って泣いている人もいました。旅人はすべてのことを見て聞いていましたが、はっきりとした口調で答えました。

「みなさんの反応は当然のことでしょう。私もこの町で生まれていたならば鳥を知らずに生きたと思います。けれども外に出てみてください。鳥は空を飛び、ハトという鳥もたくさん存在するのです」

 

 人々は旅人の毅然とした態度に困惑しはじめました。本当に鳥がいるのだろうか?ちびは鳥なのだろうか。疑問の声が湧き上がってきました。

 不安そうにするハトに旅人はやさしくほほえみかけました。

「君。ちびと呼ばれて親しまれているんだね。君は愛されている。でもね、君だって感じていたはずだ。人間とはどこか違うんじゃないかって」

 ハトはびくりとして、旅人を見ました。

 ハトはずっと自分自身のことで悩んでいたからです。

「ちび!なんでもいいから戻ってこい!嘘つきのいうことなんて聞くな!俺はあいつが嘘つきだということは分かる!」

 旅人はハトだけを見て言いました。

「私は君がハトだということを知っている。私は君が飛ぶのをこの目で見てきた。君がうれしく楽しく自由に空を飛べるようにと神様が願って、君をつくってくれたんだ。私が知っているから信じてやってみなさい。必ずできる!」